旭川で講演をしました。炭を少し食べているという人がいました。何故、炭を食べるのかと聞きますと、マイナスイオンを出して体に良いからだと言いました。
炭を使った健康方法とか、生活習慣はよく聞きます。脱臭、空気や水の浄化に使われ、さらに食べることで体内の浄化も出来るということで、加工食品にも使われているのを私もみたことがあります。講演会に来ておられた方はマイナスイオン効果があるので、少し、食べているというのです。では、そのマイナスイオン効果というものはどういうものなのですかと、尋ねたところ、答えは返って来ませんでした。そこで、マイナスイオンを説明できる方はいますかと尋ねますと、誰も手を上げてくれません。世の中では結構使われているようなのですが、「説明は?」と言われると、体に良いもののようだけど、よくわからないようなのです。こうしたものは世の中に沢山ありますね。先日、取り上げたミネラルもなかなか正しく説明できる人は少ないですね。
私も「化学」を専攻していながら、マイナスイオンの説明はできませんでした。何故かというと、今、巷で言われているマイナスイオンという言葉は空気中の陰イオンの訳語で、負イオンのことです。しかし、化学の世界でのイオンとは電子の過剰あるいは欠損状態で電荷を帯びた原子や原子団を言います。そして、電子を放出し、正の電荷を帯びた原子や原子団を陽イオン、電子を受け取って負の電荷を帯びた原子や原子団を陰イオンといいます。
例えば、水素イオンはH+で一価の陽イオン、硫酸イオンはSO4 2-で二価の陰イオンと示されています。
《主な陽イオン》
H+、Li+、Na+、K+、Ag+、Cu+、Hg2+、H3O+、NH4+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Al3+、Fe3+、Cr3+
《主な陰イオン》
Cl-、F-、Br-、I-、OH-、CN-、NO3-、ClO-、MnO4-、HCO3-、CN-、SO2-、G2-、SO4 2-、CO3 2-、(COO)2 2-
ここで、空気中でマイナスイオンがどんな状態で出来るのかと言えば、地球内部から出る放射線や宇宙から来る宇宙線、あるいは落雷などによって、O2-、CO3-、NO3-が生じ、同時にNH4+などのプラスイオンも出来ます。
一時期、マイナスイオン商品が一大ブームを起こし、エアコン、ドライヤー、加湿器、洗濯機などが販売されていますが、本当に良いのか、悪いのか、よくわからないというのが実態ではないかと思います。物質は元素が結合して出来ていますが、その結合もイオン結合、共有結合、そして金属結合などがありますが、イオン結合は陽イオン、つまり、プラスイオンと陰イオンであるマイナスイオンが結びついtげ物質が成り立っています。その中で、片方のイオンだけをとって体に良いというのは変だと思いませんか、例えば、塩化ナトリウム(NaCl)は化学塩と呼ばれていますが、これがイオン化、つまり、水に溶解させますと、一価の陽イオンNa+と一価の陰イオンCl-になります。ここで陽イオンが良いとか、否、陰イオンが良いとかと言いますか、そんなことはわからないでしょう。
放射線の照射を生体が受けると体の中で水分、つまり体液が、分解して、H+ + OH-が出来、極めてラジカルな活性酸素ハイドロキシルラジカル OH-が出現して、生体は強烈な酸化状態に陥ります。これはまさに陰イオン、マイナスイオンの発生で、発癌が生じる主たる原因物質です。私は、今、鳥取大学と共同研究で、マウスに放射線を6グレイと9グレイ照射させ、植物マグマを摂取させた群と摂取させない群、そそて放射線を照射させない群に分けて、生体の代謝状態、酸化状態、生死の状態、腸内状態等の観察実験をしています。放射線によって作られた体内の陰イオンである強毒性のOH-ラジカルに植物マグマがどう沈静化するのかのメカニズムを調べるのが目的で行っていきます。既にOH-ラジカルを沈静化させるテストは終了して結果は出ています。
私は陽イオンと陰イオンが結合し合ってバランスがとれている状態が通常なのだと思います。
今回の旭川の講演会では冒頭から、化学の時間みたいになってしまいました。原因は焦げたものはアクリルアミド CH2=CHCONH2やタール成分など出来るので、100℃以上の調理である焼く、炒める、揚げるは体に負担がかかるので気をつけてください。その話から、炭の話になり、竹酢とか木酢は植物を焼いて、その煙を冷却させたもので抽出しているので、タール成分がかなり含まれています。当然、元の炭には多くのタール成分がありますから、注意が必要ですという話題から、マイナスイオンの話になりました。
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