6月末にモンゴルで「自分の体は自分で守る」私の講演会が催される予定でしたが、体力面での負荷等から、今回は出張を控え、放送大学方式の映像による講演会にさせていただきました。講演内容は私の毒性研究を行っていた時代に得た産業現場での実践知識とそれから導き出した現実、その結果、毒物屋から真逆の毒消し屋への変身、そこで開発された毒消しに必要な武器「植物マグマ」による現代人の蘇生術の紹介等ですが、その台本を何部かに分けて皆様にお示ししたいと思い文章化しました。
―現代病の原因を究明する―
ざっくり見て病気の原因は2つあると思っています。一つは、人類は、地球上にこれまで存在しないものを作ってしまいました。それが500万種類とも1,000万種類ともいわれている合成化学物質です。30年間、私はこの毒性研究にかかわってきました。
毒性試験には一般毒性試験として長期の毒性試験から短期そして簡単なLD50という、1回だけ化学物質を投与して、半分の動物が死ぬ量を把握するなどの実験があります。さらに、化学物質の使用目的に応じた特殊毒性試験として皮膚刺激性、アレルギー、発癌性、遺伝毒性、そしてもっとも簡単な微生物を用いるエームステスト、培養細胞試験などがあります。
それでは、毒性実験が一応行われている化学物質がどのくらいあるかというと、40年ぐらい前で、4万種の化学物質の毒性調査事例というものがありましたので、現在では、10万種類位の化学物質について調査がなされていると思います。500万種類のうちの10万種類ですから、2%ぐらいしか毒性実験がされていないことになります。私が労働省管轄のバイオアッセイ研究センターというところにいたとき、国からの予算は、発癌実験1物質当り10億円とされていました。お金もかかる、人手もかかるし、時間もかかる。簡単な実験でも数十万ぐらいかかるという状況なので、毒性自体を調べていくことは大変なことです。世界で、1年間の発癌実験の実施数はせいぜい100種類といわれています。私が受けもっていたバイオアッセイ研究センターでは4種類で、試験結果はWHOのIARC(国際癌研究機関)に提出していました。世界でよってたかって1年間に100種類がいいところである。10年で1,000種類、100年で1万種類で、とてもじゃないが追いつかない。これでは毒性実験をやっていてもしょうがないということになってしまいます。
化学物質はもともと私たち生物体の構成成分ではありません。体の成分ではないものが体内に入ってきたら異物になります。毒があるかないかの前に異物になるため、体はそれを処理するために大変疲れます。したがって、ざっくりと言えば、「化学物質は人間の体にとって、すべて毒である」 化学物質を使うということは生体にはよくないことをしていると考えるべきです。それ故、もう動物実験などしなくていいだろうということになります。
もう一つの病気の原因は、誰もが「えっ」と思うようなことです。毎日食べている食べ物に問題があるのです。よく考えてみると、私たちは生き物しか食べていません。本来は、生き物以外で私たちの生命活動ができるかといえばまずできないはずだと思う。したがって、私たちは生き物である植物か、動物か、あるいは微生物を食べて、生命活動が営まれているのです。
植物の場合は、お米、パン、うどん、野菜、果物で、動物では、ウシとか、ブタとか、ニワトリ、その卵とか、乳製品などである。ところが、これらのほとんどは人間が手をかけて作ったもの、「作物」(つくりもの)である。作物という字は、作り物と書くように、人工・養殖されたものです。自然界が与えてくれたものをそのまま食べるということは、文明社会ではほとんどしていません。畑を耕したり、田んぼを作ったりして、種をまいて、米を植えたり、野菜を作ったりします。しかし、その種すらも今は遺伝子が組み換えられています。また、田畑には化学肥料が入ったり、遺伝子組み換えの種が鳥や虫に食べられないように、農薬などの化学薬剤を浸透させられています。
私たちはこうして作られた野菜、果物、米、穀類などを食べるだけでなく、飼育動物にも食べさせ、その動物を私たちは食べているわけです。したがって、私たちは知らず知らずのうちに人工・養殖された人間になってしまっているといえましょう。
私がミネラルにターゲットをしぼったのは、実は、野生の植物と栽培作物のミネラル分布の差を見たためである。栄養分布でもいいが、一番わかりやすいのがミネラルである。ミネラルは体の中には2〜3%しかない。そして、ミネラルは体内で作ることができない。さらに、毎日毎日、体の外に出ていく。大便や小便、汗で出たり、あるいは毛髪から出たりする。したがって、ミネラルは必ず体内に毎日補給する必要がある。これはご先祖様からずっと受け継いできたことである。それは、1万年前、2万年前、何十万年前の人間も同じようにして、ミネラルを体内に摂り入れて、又、ミネラルが排出されます。ところが今、体内に入るミネラルのバランスが、人工・養殖化された食べ物を食べることによって大きく変わってきています。
まず、私が調べた野生植物のミネラルバランスについて、今は環境省になっているが、前環境庁時代の調査で、私のデータと大体同じようなバランスで、野生植物はカルシウムが一番多く、次にケイ素とカリウムがカルシウムのおよそ70%ぐらいを占めている。したがって、カルシウムを1とすると、カリウムが0.7になる。次に、女子栄養大学より『食品成分表』という書籍が出版されており、ほとんどすべての食品の栄養バランスのデータが示されている。
それにより、米も麦もジャガイモもリンゴも、カルシウムを1としたときの比率で見てみた。
そうすると、野生植物に比べて、現代の作物はカリウムとリンとマグネシウムは、カルシウムに比べて比率的に際立って多い。野生植物はカルシウムに比べて、カリウムとリンとマグネシウムが1以下である。ところが、米をみると、カルシウム1に対して、カリウムが23倍、リンが30倍になっている。麦も同じようである。ジャガイモ、サツマイモも同じ。ジャガイモをみると、カルシウム1に対し、90倍以上のカリウムが入っている。このようなバランスから何が想像できるかわかるだろうか。まさに現代の作物は化学肥料のバランス体となっている。
私たちは体の中でミネラルを作ることができないため、外から入れないと死んでしまう。それを生物を食べて補給するわけですが、それが化学肥料のバランスになっているのです。このバランスの植物食材は我が国全体の99%をしめているのです。無農薬、無化学肥料の野菜を食べているといっても、我が国全体からみたら、1%ぐらいである。しかも、無農薬、無化学肥料、あるいは有機栽培というのもはなはだ疑問があり、遺伝子組み換えをしていない種を使っているか、いわゆる在来の日本固有の種かどうかといえば、わからないのが現実である。厳密に調べていくと、日本人のほとんどは在来の種で、無化学物質の栽培作物はほとんど食べられないと考えた方がよいと思う。
これはある農園で、私の開発したマグマを使った例ですが、化学肥料も農薬も要らない。撒くだけで虫がこないから、農作業が非常に楽になっている。ダイコンの一般的なバランスについて、カリウム230に対して、カルシウム24と、10倍ぐらい違う。マグマを使用した1年目では、カリウム260に対して、カルシウムが200までになっているのです。それまでは化学肥料でやっていた畑だが、1年目にして早くもカリウムとカルシウムが同じぐらいになっている。
先ほども触れたが、病気の原因は2つあると思っている。一つは前述したように、バランスの悪い食べ物を、毎日毎日食べているということ。もう一つは、生体の成分ではない化学物質が多種類、体の中に入り、負担を与えていることである。しかし、同じものを食べても病気になる人と、ならない人がいるではないかと事実もあります。これは体験上わかったことだが、それには免疫力が関係していると思います。
図:植物マグマと栽培作物中のミネラルバランス
表:野生植物と植物マグマの元素バランス
写真:毒性物性リスト1973
写真:植物マグマ
FACEBOOKページ 中山栄基