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Channel: 『植物マグマ』中山栄基 Official Blog
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【中山栄基の解説】毒には体に耐性を作る毒と耐性が出来ない毒がある

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体に耐性を作るということの意味は、致死量がわかっている毒物の場合、その量以上を1回で摂取すれば死ぬことになります。ところが、あらかじめ少量づつ一定期間体内に摂取を続け、少しづつ、その摂取量を増やしていきますと、致死量を飲んでも致死に至らない場合があります。これが体にその毒物の耐性が出来たといいます。

その代表的な例が砒素です。砒素という元素は土や岩石の中に存在するので、植物の中にも当然含有されています。又、水の中にも存在しています。勿論、米や麦、野菜、果物にも少量含有しています。当然、動物や人間も生物を食べて生命活動をしていますから動植物に存在する元素はすべて含有しています。

では何故、砒素が毒物になっているのかといえば、人間が砒素(As)だけを単独で分離し、それに酸素を結合させて亜砒酸(As2O3)を作ったり、様々な元素と結合させて砒素化合物を作り、これが私たちの体に侵入した時、動植物の中に含有している砒素とは全く異なる砒素化合物として生体に影響を及ぼすのです。砒素は本来、人間の体にとって必要な元素であると考えます。まだ、その役割は正確には把握されていませんが、人類が誕生以来、体内に存在する元素ですから、あって当然で、それを危険だといって、完全に除去したら、それはそれで生体に悪影響を及ぼす可能性もあります。

話が少しそれましたが、化学物質である強毒性の亜砒酸も少量づつ毎日、摂取をしていますと、その摂取量に対する耐性が出来ます。その性質を利用して暗殺する手段に使った例が昔から沢山あります。あらかじめ、自分だけ砒素の耐性を作っておき、致死量の砒素が入った飲み物を一緒に飲むことで、相手は安心して飲み、耐性のある自分は死なずに相手だけ殺すという方法です。

私は話す時も書く時も、体験から来るものがほとんどといってもいいのですが、今回のテーマは最近ふと頭をよぎった過去の実験から、皆さまにお伝えしようと思いつきました。

それは、クロロホルムのラットとマウスの2種類の動物を用いた吸入による発癌実験で、暴露濃度は、90ppm、30ppm、10ppm、0ppm(コントロール)でラットから始めました。この動物では順調に実験が進みました。しかし、続いて、マウスで始めたところ、90ppmの濃度では動物は次々と死亡しました。設定濃度が90ppmでラットでは耐えられましたが、マウスでは無理だったのです。

GLP(優良研究所規範)基準に定められた実験条件では、動物を2種類使用することが、全世界共通で取り決められていました。ラットの実験が始まっている以上、マウスでは、この濃度を変更することは出来ない状況でした。というのは実験の目的はどの濃度レベルで発癌が生じるかなので動物種によって濃度を変えるわけにはいかなかったのです。勿論、予備実験を行って、本実験に入るのですが、この時は90ppmより、高いレベルで行い、机上の計算から最高濃度を決定したので、こうした予期しないことが生じました。そこで、マウスに限って90ppmだけ、いきなりこの濃度で暴露させず、初めは10ppmで1か月暴露させ、次に30ppmを1か月摂取させ、続いて、問題の90ppmを投与させたところ、1か月間全く死亡動物は出なかったので、そのまま暴露を続け、2年間、90ppmで投与させることができました。

クロロホルムは麻酔薬として当時よく使われている塩素系の有機溶剤ですが、刺激性が強いため、ラットに比べマウスでは感受性が高い為か、その濃度に耐えられなかったものと思われた。しかし、最初に10ppmで1か月間、暴露させたことで、マウスに耐性が出来、続いて30ppmでさらに耐性ができ、90ppmにも耐えられる体作りができたと考えます。

ところが、その耐性が全くダメな毒物もありました。それは青酸化合物で、私はシアン化カリウムの慢性毒性試験をウサギを用いて経口投与で行いましたが、その時、砒素と同じように、耐性試験をしましたが、シアン化合物の場合は致死量以上を投与すると、アッという間に死に至ってしまいます。砒素化合物の有毒作用は遅延性で時間の経過と共に毒作用が現れてまいりますが、シアン化合物は酸欠状態を起こすためか、一瞬で死に至ってしまいました。強烈な抗酸化物質である為、酸素の代謝に異常を生じるのであろうと思われます。

しかし、面白いことに、少量づつシアン化カリウムを摂取させていきますと、1年間続けたところ、何も与えない動物よりもシアン化カリウム摂取動物の方が元気で体重の増加もよく、血液生化学データでも問題はありませんでした。これは、抗酸化力があるため、体が酸化されないので、かえって体は健康体を維持してきたといえましょう。勿論、シアン化カリウムを少量毎日飲んで元気になりましょうとは、とても言えませんが、抗酸化力の高いもので毒性のない生物食品であれば体に良いと考えられますね。

写真:砒素(ARSENIC)
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