【中山栄基の解説】300年続いている置き薬の平安堂さんの薬剤取り扱い者の講習会で、化学物質の有害性について、現代病は何故、生じるのか、自分の体は自分で守るための手法について、講演しました。
講演会場は佐賀県東部の三養基郡に属する基山町の町民会館で立派な建物でビックリしました。豪雨で今、九州各地は大変な被害に遭遇されていますが、ここ基山町は普段は雨の多い地域なのですが、今回は無事で、朝からひどい雨にもかかわらず、医薬品取り扱い者の方々以外にも無農薬のお茶を地元で作っているご夫婦、自然食店の経営者、植物マグマを摂取されている方々が参加されました。基山は私の名前の4つの字の内、2つも入っている地で、何となく、自分の所縁の地のように感じました。
三養基郡基山町の町民会館
その1 化学物質の有害性について、GLP基準
私が平成2年に産業医学レビューに「GLP基準について」を発表しましたが、今回の講演会で、この内容を引用しました。GLPとはGood Laboratory Practiceの略で優良試験所規範というもので、平たく言えば、化学物質の毒性を調査する時、得られた試験データが不正がなく正しく行われた試験であるか否かがわかりません。しかし、世界の有害性調査に関する政府機関、例えばFDA、EPA、OECD、日本では労働省、厚生省、農水省(今から30年以上前のこと)などが認めた試験機関で実行することでデータの信頼性を保証しようという主旨でGLPという制度が作られました。GLP研究機関になると、研究所の設備からスタッフのレベルまでハード、ソフトとも厳しい条件があります。当然のことながら、不正のチェックは最も厳しく、試験データの保管も義務付けられております。過去に、STAP細胞についてRaw Dataの提出ができなかったようなお粗末なことがありましたが、GLP認定機関ではそのようなことは到底考えられないことで、直ぐにRaw Dataが開示されなければ、不正をしていたと見なされます。研究データの捏造はこの業界ではそれほど珍しいことではありません。但し、不正が発覚した時は直ぐにわかってしまいます。
しかし乍ら、毒性研究はすべてGLP機関の行ったデータでなければダメだということではありませんが、高い信憑性が必要という場合は、GLP機関ということになります。
化学物質の毒性試験 -GLP基準についてー 中山栄基(日本バイオアッセイ研究センター 信頼性保証主管)
化学物質の毒性試験 -GLP基準について- 中山栄基
はじめに
我々が生活環境や産業の場で接触する化学物質は一体何種類位になるのだろうか、食べものからの摂取が圧倒的に多いとは思われるが、水や大気の中にも相当数の化学物質が含まれており、想像もつかないほどの数の化学物質による複合汚染を受けているであろう。勿論、摂取した化学物質がすべて有害であるとは言えないが、逆に、全く無害であるとも断定できない。少量では無害であっても多量の摂取によって思いもよらなかった毒性を示す物質もある。むしろ、通常ではこの毒性の出現パターン、即ち、量反応関係にあるものが一般的であると思われる。勿論、発癌作用などにも一概にこの関係のなり立たない場合もあるが。
さて、時に化学物質が両刃の剣であると表現されることがあるが、昨今の現況からみてまさにその通りで、我々はこの化学物質の驚異的な発展の恩恵を深く受けている一方、知らず知らずのうちに健康を損なっているという危惧もある。もし、それが事実とすれば有益の代償を健康障害という形で支払っていることになる。フロンガスによるオゾン層の破壊、CO2による地球温暖化など無害とされてきた化学物質によるこれまでにないような規模の環境汚染が新聞、テレビ、学術雑誌などで大きく報じられるにつて、無害と言われる化学物質など皆無であると改めて認識させられてしまう。
しかし、個人レベルではそれほど危機感がないのも事実であろう。しかし、地下水が汚染され、飲水中に発癌作用のあるとされている四塩化炭素やトリクロロエチレンが広範囲に混入されているといわれると、我が家の水道水は大丈夫だろうか、もし、その水を飲んでいた当事者であったなら、混入した化学物質の毒性試験データから自分達に出現するかも知れない有害作用を真剣に検討するであろう。このように、今や毒性試験も身近な問題として抵抗なくとらえられる時代になっているが、それだけ化学物質の有害性が認識されつつあるのはよいことでもあるが、反面、環境汚染も進んでいると言えよう。
さて、現在の化学物質の安全性評価の状況にいては動物実験にはあまり大きな変化はないが、短期間で結果が得られる微生物、細胞レベルを用いた変異原性試験が発癌性試験のスクリーニングとして定着してきた。しかし、著しく変化したのは法律上の規制など行政面での対応である。これまで、毒性試験を実施する施設に対する基準というものは設けられていなかったが、70年代後半から80年代なかばまでにかけてGLP(Good Laboratory Practice、優良試験所規範)といわれる基準が化学物質の製造、使用の許可をうける規制当局で制定された。具体的に言えば、医薬品、食品添加物は厚生省、農薬は農林水産省、化学品は通産省や労働省に許認可の申請を出すが、その時、毒性試験データを提出しなければならないが、試験を実施した施設は規制当局のGLP基準を満たしていることが審査される。
以下に、我が国に導入されてまだ日の浅いこのGLP基準の実態について述べてみたい。
GLPとは
我々がGLPという活字に接してから、かれこれ10数年になるが、我が国に制度そのものが導入されてからはまだ10年にもなっていないため、やっと暗中模索の域を脱した時期であると言えよう。
さて、いきなりGLPの話に入ってしまったが、ではGLPとは一体何であるか?極端に言えば、化学物質の毒性試験データの質と信頼性を確保するために試験実施機関がハードとソフトの両面について兼ね備えなければならない事項と項目を定めたものである。しかし、GLPは毒性試験データの提出を求める当局(省庁など)が規制を目的して制定したものであることから、GLPの適用対象となるのはその当局に提出する場合だけに限定されるので、すべての毒性試験がGLPの運用となるものではない。例えば、医薬品として製造、販売する時、厚生省の指示により、各種の毒性試験を実施し、そのデータを当局に提出する際、該当する試験を実施した機関は厚生省が定めたGLP基準の運用を受けることになる。それ故、単に研究を目的として実施した機関、あるいは規制当局に提出する試験ではないものについてはGLPの運用対象にはならないので、毒性試験はすべてGLPであるような誤解はしないよう認識していただきたい。しかし、GLPは信頼性の高い試験データを得ることが目的で、GLPに適用しない試験だから粗雑であってもよいというのではなく、GLPの基本的精神を導入して、GLPを意識して実行すれば質の高い、信頼性のあるデータを常に得ることができるものと思われる。
今から、27年前に書いたものですが、「はじめに」の文章も今の化学物質についての理念とそれほどかけ離れてはいないようでした。GLPの制度について知る人は今回の講演会に出席された方は誰も知らない状況にありました。しかし、医薬品の安全性データ、副作用のデータはこうしたGLP認定機関で実行されているという、裏話を知っていただきたく、話題にしました。しかし、どんなに有害性があってもGLP機関で行ってさえいれば、医薬品として認定されるということがまかり通っているのは、腑に落ちないことですね。
今後どれだけの医薬品が必要不可欠であるのかが問われる時代になると思いますが、それまで、どれだけの犠牲者がでるのか、想像もつきません。
世界の化学物質を取り締まる政府機関は生体に有害性があったら使わないという考え方はほとんど存在せず、有害性があるから注意して使いましょうというスタンスだと思います。それ故、私は有害性調査をいくら実施しても根本的な解決にはならないと思い、それなら、化学物質の毒消し、化学物質を出来るだけ、使わせないための方法を模索する研究に入るべきと考え、現在の野生生物が病んだ現代人を癒す役割をしてくれるという理念で野生植物マグマにたどり着きました。
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