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【中山栄基の解説】放射線についての最低限の知識を知ろう

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【中山栄基の解説】放射線についての最低限の知識を知ろう

1.放射線は怖い存在?救世主?
我が国は世界で唯一、戦争による放射線の大規模な被害を受けた国で、放射線が殺戮の道具に使用されたら、極めて恐ろしい存在になることを、身をもって体験している民族である。さらに地震と津波による福島原子力発電所の崩壊事故による未曽有の放射線被曝を起こすという改めて放射線の恐ろしさを体験させられている国である。

ソ連は核保有国であるが、チェルノブイリ原子力発電所での悲惨な死傷事件で、放射線が生体を治すことの出来ない状態にまでに壊すものであることを体験した国である。

しかし、原子力発電所は私たちの生活に欠かせない電気を供給する施設ということで作られたものなのに、今や、本当に必要なものなのか、はたまた、厄介者なのか、議論は二分されています。我が国の現状では、沢山の原発があるのに、ほとんどが停止状態に陥っているのが事実です。

又、様々な被害が発生しているものの、放射線の医療分野での利用は目覚ましいものがあり、この分野での利用度を考えたらまさに、必要悪といっても言い過ぎではないといわれるほど
、現代社会に浸透している放射線に私たちは、これから先、どう対応していくべきかを今、問われています。

2.放射線とは何ぞや!
放射線とは、あらゆる方向、つまり放射状に飛び出していく全ての電磁波と粒子線のことです。電磁波には、波長の長いラジオ波からマイクロウェーブ、赤外線、可視光線、紫外線、?線(ガンマー線)、エックス線などがあり、粒子線には、α(アルファ線)、β(ベータ線)、中性子線、陽子線などがあります。このうち、生体の電離作用(イオン化)を引き起こし、電子を奪い取るといった悪影響を及ぼす紫外線などがあるが、紫外線の電離作用は弱いので、通常はこの中に含めていません。

図1 放射線の種類と透過能力(出典:「原子力・エネルギー」図面集)
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3.放射線と放射能はどう違うの?
放射線とは電磁波と粒子線そのものをいい、放射能とは原子核が過剰なエネルギーを放射線として放出する能力、性質、現象のことをいいます。

ところが新聞などをはじめ、マスコミでは、放射線と放射能をごちゃ混ぜにして使っているので「放射能は怖い」などという変な日本語になっています。

本来ならば、「電離作用を持つ放射線は怖い」ということなのですが、能力や性質が怖いになっているように、用語の乱れが著しいのは嘆かわしいですね。

4.放射線の単位
放射能の単位にはベクレル(Bq)を用います。1Bqは1秒間に1個の放射性壊変をする放射性物質の量を表します。

放射線の単位には、グレイ(Gy)、シーベルト(SV)を用います。
グレイとは、物質がどれだけ放射線のエネルギーを吸収したかを表す量で、1Gyは物質1kg当り、1ジュールのエネルギー吸収を与える量です。通常は100万分の1を意味するマイクログレイ(μGy)が使われます。

シーベルト(Sv)は、放射線が人体に及ぼす影響を含めた線量で、1シーベルトの1,000分の1を表すミリシーベルト(mSv)、100万分の1を意味するマイクロシーベルト(μSv)が通常使われます。

5.自然界に存在する放射線と人工放射線の違いは?
地球誕生と共に放射性物質は存在していたので、人類を始め地球上の生物はみな自然界の放射線と共存してきたので、余程のことがない限り、自然界の放射線は生命活動に危害は生じmせんでした。しかし、オゾン層の破壊によって、これまで宇宙からの放射線量は問題ないと考えられてきたが、これからはそういうわけにはいかないと考えざるを得ません。

表1 自然放射線から受ける線量(出典:「原子力・エネルギー」図面集)
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自然界での放射線はどこにでも存在するものですが、必要不可欠というものかと言えば、そうではないと考えます。そして、極めて、希薄な濃度レベルで存在しているので、生体にはよい意味で僅かな刺激、ホルミシスを与え、活性作用を起こしているのではと思われます。

ところが、人類はこの自然の放射性物質を濃縮したり、核分裂反応を発見し、瞬く間に、3,000種類あまりの放射性物質を開発し、今日に至っています。

基本的には自然放射線も人工放射線も生体への影響には変わりがありません。問題になるのは生体のどの部位にアタックするか、或いは蓄積濃縮するかで、障害の強さが変わります。

このように、人類は極めて高エネルギーの放射線を手に入れたことから、開発当初は、研究者や、レントゲン技師などの使用者は、皮膚癌に始まり、各部位の癌、造血障害、生殖障害など様々な障害を受けた苦しい体験を元に、今では、放射線に対する障害予防の規則や、安全管理が法律で定められています。

人工放射線源は、発生装置と密封式のラジオアイソトープ(RI)、開封式のラジオアイソトープ(RI)に区別されていますが、人間はこの人工放射線に対して防護を徹底しないと、障害は死に直結する極めて怖いものです。


6.生体障害
生体への放射線の作用は、放射エネルギーが直接標的にされて生じる直接作用と、水に作用してこれを分解して活性酸素を作り出し、これらが標的に障害を与える間接作用の2つがあります。

放射線安全研究センターでは放射線の障害を表のように区別して研究していますが、急性で1回の高線量の被爆で障害を受けると、皮膚や血液を作る造血器、腸などに顕著な障害が生じ、最悪の場合は死に至ることは、これまでの原爆被害やチェルノブイリ原発事故や、最近の日本での東京電力の福島原発事故などでの被害で皆様にも周知のことです。

表2 放射線の生体障害
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一方、低線量の放射線に長期にわたって被曝すると、長い時間を経過して発癌が生じたり、突然変異が誘発される、それがどうして起こるのかというとそのメカニズムは次のようである。

図2 体内の水分が放射線によって壊されていく過程
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放射線は体の中で水を分解して、フリーラジカルを作る
放射線は体の水分を猛烈に振動させて、いとも簡単に分解させてしまい、最も毒作用の強いハイドロキシルラジカル(OH)を作ってしまい、これが細胞に侵入し、DNAの主要な鎖を切断したり、或いは、塩基の障害を繰り返し起こして癌化させると考えられています。

放射線をよく浴びる職場にいる方、例えばX線技師などが、癌にかかりやすい、と言われているのは、こうした体内の水分を壊してしまう放射線が、何時も体内に少しずつ侵入して、フリーラジカルを作り、悪さをしているからだ、とされています。

水はH2Oという酸素と水素が結合したものの集合体で、放射線が体の中の水を接触すると、水の持っている大事な電子を奪い取っていき、水が不安定なイオンになり、それと共に分離させられた酸素と水素の原子が、とてつもない毒性を持ったハイドロキシルラジカルに変身してしまい、体の中は電子に満ち溢れた還元状態から、電子が減少し、不安定な酸化状態に陥り、体のあちらこちらでパニックが起こってしまう。

表3 自然放射線の内訳(出典:「原子力・エネルギー」図面集)
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図3 放射線の減り方(出典:「原子力・エネルギー」図面集)
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FACEBOOKページ 中山栄基
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