体が酸化することは健康によくないと言われます。それ故、酸化を防ぐこと、つまり抗酸化状態にあれば健康だと言うことになります。それでは、還元とは一体何なのだろうか。
酸化と還元の定義は一般的には次のように定義付けられています。
表:酸化と還元の定義
上の定義から物質に酸素がくっついた状態を「酸化」、又、その全く逆で、物質から酸素が失われていく状態が「還元」です。これは中学の理科で習っていることなので、何となく、わかります。酸素は人間にとって必要不可欠な元素ですが、これが体にたくさんくっつくことで、酸化して体内では酸化物、或いは、過酸化物などが多くなり、体は健康状態が保てなくなります。還元とはそんな不健康状態から、くっついていた酸素をどんどん離すことで、健康な体に戻っていくことだとすれば、理解できます。
次に、水素を失う、つまり水素をあげる状態が、酸化で水素をもらうのが還元となると、一般の人には、何のことかとても理解できなくなります。ここで少しわかりやすい話をすれば、人間を含めて生物は、酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の元素が大部分で、その他100種類あまりのミネラルとされる元素で構成されています。そして、酸素はそのうち60~70%、炭素が20%程度、水素が10~15%、窒素が0.2~数%を占め、ミネラルはほんの数%です。
人間に最も多い元素である酸素は六価でマイナスイオンと言われ、酸化物で電子をもらう性質があります。又、三番目に多い水素は一価でプラスイオンで還元物で、電子をあげる性質があります。
これで少し、理解の糸口が見えたのではないかと思いませんか、体は酸化物と還元物の元素のバランスで出来ています。因みに二番目に炭素は四価でマイナスイオンでもプラスイオンでもなく丁度中間なので、酸化物でも還元物でもないということになります。このように生物は100種類以上の元素が上手にバランスがとれ、拮抗した状態が保たれていれば健康ということにはなるのですが、酸素がどんどん多くなって水素が失われて、電子が酸素でどんどん取られてしまっていくと、体は酸化物に溢れた状態になり、健康バランスが崩れていき、様々な病気を引き起こしてしまいます。物質は様々な元素の集合体ですから、イオンで結合したり、お互いの元素を共有して結合したりで、バランスがとれて物質化、そして、生物化しているのです。化学とはあくまでも人間が決めた学問ですから、100%正しいものかどうかは別として、大筋は理解し肯定できるものと考えます。しかし、最も大切なことは化学物質はいくらでも同じものをつくれますが、生物には同じものはありません。又、自然界の無生物の物質も同じものはありません。しかし乍ら、化学の世界ではこれらを同じ次元、同じ土俵で酸化とか還元を当てはめようとしますので、それが正しいかと言うと、答えは難しいと思います。沸点一つにしても化学物質単体の元素と自然界の物質中の元素では全く異なるように、同じ枠では当てはめられません。
生物は一つ一つが違っていますから、それらに個体差が出来ます。つまり、同じ酸化力を与えても、高い還元力を持っている人と、持っていない人とでは酸化する度合いが全く異なります。同じものを食べている家族でも健康な人と病気の人が出るのは個体差があるからと言えましょう。体に酸化力が蓄積されれば、されるほど体を防御する免疫力が低下し、健康が害されていきます。私は25年ほど前に、この酸化力と還元力を取り入れた健康に関する本「長生き食品・早死に食品」をプレジデント社から刊行しました。
世の中には酸化物も還元物もいろいろありますが、例えば青酸カリなどは強烈な還元剤で細胞中の酸素を奪ってしまいます。私は化学物質はどんなに還元力があっても体に良いとは考えていませんので、除外します。私たち人間は生き物を食べて生命活動をしていますので、その中から、毒性の少ない還元物質は体に良いものと考えました。その一つの指標として酸化還元電位計(ORPメーター)で物質を測り、分類しました。その中で還元力の高い生物材料にはどんなものがあるかといえば、生野菜か動物の内臓物などでした。又、排泄物では糞便は極めて高い還元力を持ち、尿は生体の酸化の程度を知るバロメーターになりますので、尿の酸化還元電位が酸化側に傾いていたら、体は酸化が勝っていることになります。
そこで私は野草、樹木葉、海藻などの野生植物をマグマ化した植物マグマを開発しました。表にみるように、この植物マグマは酸素、炭素が通常の野生植物の半分程度になり、水素、窒素が消失したことで、有機毒性は全くなくなり、酸素の減少により、極めて高還元力の無機元素物質群ができました。ORP値は水素以上が示されているので、食べたり、皮膚に塗布することで、生体は皮膚表面も、又、体内も、還元力が酸化力を常に上回った状態に維持することが可能になったことで、健康が保持できるという理論が成り立ちました。水素水や水素を保持した食品がアンチオキデーション、つまり抗酸化剤としてもてはやされるのはORP値が還元側にあることから来ていると考えます。アルカリイオン水もそうした還元力を備えた水ということから、利用されてきたわけですが、多くのものが、その還元力のもととなるORP値が長く持続せずに直ぐに壊されてしまうのです。水素は直ぐに気化して、安定していませんので、なかなか体の中に取りいれたつもりでも吸収してくれないのです。そうした点を克服して、及川胤昭氏がマイナス水素イオンなるものを開発して世の中に出しています。私も体に害にならず、還元力が体に備わり、電子で溢れた状態にあれば、体から電子を略奪し、過酸化状態に貶めるものに対抗して酸化が食い止められれば、健康が保たれます。更に、酸化した生体から、酸素を引き剥がし、電子を供給して元の酸化していない生体に戻すことができれば病気は治せることになります。その意味からも「還元力」は病気を治すキーマンとされていますが、これまでのところ、OH-ラジカルを壊す還元力をin Vitro(試験管内)、in Vivo(生体内)で現実的に示すものは、なかなか、ないのが実状ですね。その証拠たるものは免疫力を持続的に挙げられるものということになります。
表:野生植物と植物マグマの元素
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